なぜラボでのエルゴノミクスピペッティングに関心を持つ必要があるのでしょうか!

· 製品ニュース

なぜラボでのエルゴノミクスピペッティングに関心を持つ必要があるのでしょうか!

あなたは96ウエルプレートや384ウエルプレートへのピペッティングを手動により行った後に、手首の筋肉をストレッチしたり、動かしたりする一人ですか?プレートの設定中は正しいサンプルを正しいウエルに分配することに完全に集中しており、最後のチップをイジェクトした後にやっと手首や親指が著しく緊張していることに気付くでしょう。層流キャビネットで培地のフィードまたは継代培養する細胞培養プレートのスタックの前に座って、その日最後の1時間をピペッティングで過ごすかも知れません。全てのプレートがインキュベータに戻ると、あなたはおそらく無意識に背中のストレッチをして、作業中に緊張してしまった筋肉をほぐすでしょう。もし幸運にもあなた自身は痛みを感じていなくても、痛みを訴えている同僚がいることに気付くでしょう。

反復ピペッティングまたはやっかいな姿勢が痛みの原因になりうるとする経験的エビデンスがあります。これは、年間300時間以上のピペッティングを行うことにより、筋骨格系の障害をもたらすリスクが上昇することを報告した研究により裏付けられています1。 あなたが年間180日から200日間働くと仮定して、1日に1時間から2時間のピペッティング作業を行うと、損傷リスクを高めることになります。このデータは25年前のものですが、その後、何が変わったのでしょうか?私たちの身体はこの期間に何も進化していませんが、ラボ技術者の作業負荷およびサンプルのスループットは明らかに増加しています。自動化は、以前と比べて確かに広がってきていますが、2時間以上のピペッティングはまだ一般的な作業です。また今日のラボでは、ピペッティング作業を行っていないときは、コンピュータの前に座っています。お疲れ様です!あなたは作業日のすべての時間、エルゴノミクス的危険に曝されているのです!

RSI – WRULD – MSD – CTD … 混乱しそうですね?!?

エルゴノミクスの問題をとりまくさまざまな用語や略語が多く存在します(用語集を参照)。簡単に説明すると、これらの用語は全て、長時間の動作や反復動作によって引き起こされる手、首および肩の痛みを指す言葉です。例えばRSIは、頻繁で高度に反復的な作業により引き起こされる一定範囲の健康問題を示す言葉であり、WRULDは、作業日に実施された活動により引き起こされた上半身の症状を意味します。エルゴノミクス的危険に反復的に曝されたことにより引き起こされる症状の典型的な例として、手根管症候群、腱炎、腱鞘炎、およびテニス肘などがあります。

用語集  
RSI 反復性運動過多損傷
WRULD 業務関連性上肢障害
MSD 筋骨格系障害
CTD 累積外傷性疾患

ピペッティング中に何がRSIを引き起こすのでしょうか?

RSIが発生する可能性は、多様なリスク因子に依存しています。1つまたは複数のリスク因子への曝露が大きいほど、リスクは高くなります。このことは、特に長時間の手動ピペッティングプロセスで当てはまり、ラボの作業者は全ての主要なリスク因子に直面しているのです。

姿勢

多くのラボにおいて、ピペッティングはラボベンチに座って実施されます。コンピュータの前に座っているときと同様に、背中を真っすぐに伸ばし、可能なときには頭と肩を真っすぐにして、同時に肩をリラックスさせることが重要です。脚はラボベンチの下に、足は床上に平らに置き、必要なときにはフットレスト上に置くべきです。理想的には、腕は身体に近接して保持する必要があります。職場を整理し、全ての試薬および実験容器を手の届くところに置き、身体の伸展を避けるようにする必要があります。

不幸なことに現実的には、多くのラボにおいて日常的にやっかいな身体姿勢が見られます。ラボには、ピペッティング中に立って、眼の高さで試験管を持ちピペットで滴下していたり、または何時間も続けて層流キャビネットの前でうずくまって座っていたりする作業者もいます。さらに、ピペットなどのラボ器具は、操作時に持ち上げなければなりません。ピペットの重さは、その持ち上げ方に影響を及ぼします。プランジャー、チップ取り外し機構、容量変更機構などの構成部品のサイズおよび位置により、人間工学に基づいて持ち上げることができるかどうかが決まります。

フォース(力)

手動によるピペッティングでは、プランジャーは親指で操作します。これにより、管理された状態で液体を吸引および分配することができ、全ての液体を確実に分配するにはさらに力が必要となります。親指の力は、高粘度の液体をピペッティングするときにさらに増加します。また、ピペットを持ち上げるときや使用中に高い位置に保持するときに力が必要となり、親指筋の助けを借りてハンドグリップを安定化することになります2。 ピペットの重量は、これらの力に影響します。

反復

正確で精度の高いピペッティングは、課題が多く、多くの高度に単調な動作が関連していることを私達全員が知っています。すなわち、ピペットにチップを装着し、親指でプランジャーを押し下げ、原料液まで移動し、親指を上げて吸引し、ターゲットまで移動し、親指でプランジャーを押し下げて吐出し、最後にチップをイジェクトします。これらの動作は、1日に数時間、1週間に数日、何度も何度も繰り返されます。

RSIはあなたの健康に影響を及ぼします!

多くのラボ作業者は、自分の職業と使用するツールに情熱を傾けています。しかし、あなたの健康に影響を及ぼし、結果としてあなたの余暇時間にも影響を及ぼす作業環境は、本当にそれに値するのでしょうか?あなたのラボプロセスにわずかな変更を行うだけでエルゴノミクス的危険を回避できるのであれば、おそらく答えはノーです。

今のところ幸運にもあなたは痛みを感じていなくても、作業環境を早期に変えることにより、将来の問題を回避することができます。今始めましょう! 雇用主に話しましょう。多くの国では、雇用主は リスクアセスメント試験を実施することにより、各職場のRSIリスクを評価する法的義務があります3。 どの雇用主も、大事な目標は、医師や理学療法士が不要な健康なスタッフをラボに雇用することです。ですから自信を持ってください。ラボワークフローでエルゴノミクスを改善すれば、ラボの同僚や雇用主に感謝されるでしょう!

あなたの身体に聞いてください!

RSIの初期症状は、手、肩、首、手首または親指の疼痛、うずく痛みまたは圧痛、硬直、ズキズキする痛み、刺痛、しびれ、脱力、および筋痙攣などです。これらの初期症状のうちのどれかに気付いたら、まずは疼痛の原因となっている反復動作を特定してみてください。可能な場合は、以降この動作を回避するか、またはあなたのプロセスを調整してください。

反復動作を実施しないときでも疼痛が持続する場合は、治療が必要となりますので医師の診断を受けてください。RSIは症状に応じて、鎮痛薬やステロイド注射から理学療法まで、多様な方法で治療することができます。重度の症例では、痛みが鎮静化するまで病気休暇を取る必要があるかもしれません。

RSIからの回復にかかる時間は、症例ごとに異なります。しかし、RSIは長期にわたって発症し、不幸なことに回復には長い時間がかかります。また、悲しいことに 重度RSIに罹患すると、再発のリスクが高くなります。問題を無視すると、長期的障害につながる可能性があります。

下記のグラフは、あなたのラボプロセスに適用可能な、RSIの反復問題を回避する予防手段の一部を示しています。

親指

問題

手動ピペットはプランジャーを押し下げる力が必要であり、親指腱鞘炎などの問題を引き起こす可能性があります。手動によるチップのイジェクトは、イジェクトに必要な力が強すぎる場合に、同様の症状を引き起こす可能性があります。

どうしたらよいでしょうか?

プランジャーを押し下げる力とストローク距離が最小の手動ピペットを選択します。プランジャーがマイクロプロセッサーにより制御されているため、電動ピペットは理想的であり、 最低限の親指動作しか必要ありません。最小のイジェクト力を必要とするチップを使用します。

INTEGRAのソリューション

  • EVOLVE手動ピペット は軽量でプランジャーは小さい力で操作できる。
  • VIAFLO/VOYAGER電動ピペットは、1つのボタンによるプランジャー制御と、直感的サムホイールデザインを特徴としています。単純にボタンを押すことで、ゼロフォースで吸引および吐出を実行します。
  • GripTipピペットチップに必要なイジェクト力は、市場で最小です。
  • ASSISTピペッティングロボットは、ハンドヘルド電動ピペットを自動化し、反復的な手動作業を無用にします。
  • VIAFLO 96/384電動ピペットは、ピペッティングに費やす時間を大幅に削減し、コンピュータ制御のプランジャーおよび電動チップイジェクト機構が備わっています。
Ergonomic pipetting: Graphic of a hand, orange spot on thumb to indicate hand pain from pipetting

問題

チップ装着時、強く打ちつける動作は、長期間にわたる手の疼痛につながる可能性があります。さらに、長時間ピペットを強く保持しすぎると、神経損傷につながり、手根管症候群を引き起こす可能性があります。

どうしたらよいでしょうか?

ピペットを強く保持しすぎないようにしてください。手を休めるためのフィンガーフック付きで、チップを強く打ちつける必要性を低減するチップ装着力の小さいピペットを選択してください。

INTEGRAのソリューション

  • EVOLVE手動ピペット は軽量でプランジャーは小さい力で操作できる。
  • VIAFLO/VOYAGER電動ピペット、および EVOLVE手動ピペットは、GripTipsを使用しており、チップを強く打ちつける必要がなく、簡単にチップを装着できます。
  • ASSIST PLUSピペッティングロボットは、自動チップ装着を特徴とし、ユーザはピペットに手を触れる必要がありません。
  • VIAFLO 96/384電動ピペットは、同時に全プレートの分注/混合を実施することにより、ピペッティングに費やす時間を大幅に削減し、チップの装着は電動で行われます。
Ergonomic pipettes: Graphic of a hand, orange spot on palm to indicate hand pain from pipetting

手首

問題

高頻度で手首を大きくひねったり回転したりすると、筋肉損傷を引き起こす可能性があります。手首を折り曲げることは特に問題であり、不自然な位置に手首をさらすことになります。

どうしたらよいでしょうか?

容量変更が容易で、手首を自然な位置に保持できるピペットを選択します。回転が可能なピペットハンドルにより、ユーザは最も快適な位置を選択することができます。

INTEGRAのソリューション

  • EVOLVE手動ピペットは、3つの個別ダイアルを用いて簡単に容量変更ができます。これにより、プランジャーをひねるという典型的な手順を回避することができます。これにより、迅速な容量変更が可能となり、手首に影響を与えません。
  • VIAFLO/VOYAGER電動ピペットに付いているハンドルは、回転して各ユーザが最も快適な位置を見つけられるようになっています。容量変更は、快適なサムホイールを用いて簡単に実施可能です。
  • ASSISTピペッティングロボットはハンドヘルド電動ピペットを自動化し、これにより、手首を動かす必要がありません。全ての容量変更および液体取扱い作業は、簡単に使用できるプログラムを介して実施されます。
  • VIAFLO 96/384電動ピペットは、自動モードで操作することができ、手動操作時間および手首の動作を低減します。
RSI prevention when pipetting: Graphic of an arm, orange spot on wrist to indicate pain from pipetting

首および肩

問題

長時間にわたるピペッティングにより、首や肩が前方に曲がった姿勢になってしまいます。一般的に、ピペッティングによる悪い姿勢は、筋肉への血流を損ない、制限する原因となります。無理な姿勢は通常、層流エアキャビネットでの作業と関連しています。

どうしたらよいでしょうか?

姿勢に気を付けてください。頭部は真っすぐに肩の上にあるべきで、肩は臀部と一直線になっている必要があります。椅子/スツールの中央に座り 背中を真っすぐに伸ばします。

INTEGRAのソリューション

  • ASSISTピペッティングロボットは、手動によるピペッティングを排除することにより、姿勢の問題を完全に解決します。
  • VIAFLO 96/384電動ピペットにより、あなたの首は直立位置を保持し、肩はピペッティングプロセスの間リラックス状態を維持できるようになります。モーター補助によるピペッティングヘッドの作動は、楽なワークフローを可能とし、電子制御によるチップ位置決めは、目視によるコントロールが無くても、最善のウエル位置に誘導してくれます。
More comfort while pipetting: Graphic of an upper body, orange spot on neck and shoulder to indicate pain from pipetting

問題

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、長時間にわたるピペッティング時に起こる可能性があり、特に肘を完全に延ばす必要がある場合に起こる可能性があります。ピペッティング時に硬い表面に肘を休めることは、問題を悪化させる可能性があります。

どうしたらよいでしょうか?

肘を完全に伸ばさず、実験容器を極力ピペッティング領域に近づけてください。

INTEGRAのソリューション

  • ASSISTピペッティングロボットはハンドヘルド電動ピペットを自動化し、手動でピペッティングをする必要がありません。従って肘を動かす必要がありません。
  • VIAFLO 96/384電動ピペットは、肘が完全に伸びきらないで使用できるように設計されています。また、ピペッティングプロセスを自動化することも可能です。
graphic of an elbow with orange spot to indicate pain from pipetting

参考文献

  1. Björkstein MG et al.1994.Hand and shoulder ailments among laboratory technicians using modern plunger-operated pipettes(近年のプランジャー操作ピペットを用いたラボ技術者の手および肩の疾患).Appl Ergon 25(2), 88-94.
  2. Wu JZ et al.2014.Analysis of the musculoskeletal loading of the thumb during pipetting – A pilot study(ピペッティング中の親指の筋骨格負荷に関する解析 – パイロット研究).J Biomech 47(2), 392–399.
  3. https://osha.europa.eu/en/tools-and-publications/publications/factsheets/80

ご質問は有りませんか?喜んでお答します。

  • Stephanie Stursberg

    Product Manager

    メール