細胞培養操作の再現性を向上

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細胞培養操作の再現性を向上

操作者間のばらつきが発生する要因

細胞にかかる負荷

再現性のある生存可能な細胞を確保するため、日常的に細胞培養パラメーターをモニタリングしますが、操作技術のばらつきは見落とされがちです。がんスクリーニング用途におけるばらつきを分析した結果、研究グループ間よりも研究グループ内ではるかに一致性が高く、研究グループ間では成長阻害率に200倍のばらつきが確認されました2。これは、各研究チームの実験方法やピペッティング技術、機器の品質の違いによるものだと思われます。これら要因により細胞にさまざまな負荷がかかり、細胞の生存率が変動し、実験の再現性も低下します。せん断応力はピペッティング時に発生する、細胞への避けられない負荷要因であり、特にピペットチップが狭すぎたり押し出される速度が速すぎる場合に生じます。この作用は、表現型や行動の変化を引き起こし、最終的には細胞の生存率に変動を及ぼす可能性があります。したがって、細胞培養にワイドボアチップを使用するラボグループでは、標準的チップを使用するグループよりも高い細胞生存率とより正確な結果が得られる可能性があります。

手動ピペットで作業を行う場合、プランジャーを押す速さによって変わる吸引速度や分注速度と同様にピペット角度も、ユーザーによって異なるのはのは必然です。、急な開始や停止、ぎこちない動きなどは、操作を担当した研究者による十分な注意がない場合、気づかないままばらつきを生む可能性があります。電動ピペットは、ピペッティングと混合速度を明確に定義し記録することが可能であり、ユーザー間による分注の違いを最小限に抑えることができます。ワイドボアチップと電動ピペットを組み合わせることによって、どのユーザーもバイオプロセスの条件をより制御できるようになり、細胞の生存率を向上させることができます。

Scientist pipetting cell culture medium into a 24 well plate using an INTEGRA pipette

プロトコルからの逸脱

再現性のある細胞増殖を達成するには、、研究者は可能な限り概説されたプロトコルに従い逸脱しない必要があります。例えば、播種した細胞数や培地内の細胞分布のばらつきは、細胞の増殖を変動させ、結果に影響を与えかねません。また、細胞毒性アッセイの場合は、細胞数によって抗生物質の最小発育阻止濃度が大幅に上昇するinoculum effect(接種効果)と呼ばれる現象が生じるため、細胞数を一定にする必要があります。培地を頻繁に混ぜることによって、細胞が溶液中に浮遊して均等に分散し、容器の底部と上部の間に細胞濃度の勾配が形成されるのを防ぎます。この操作は、細胞の均等な分配と播種を確実に行うため、すべての実験で一貫して行われなければなりません。しかし、混合することによって、細胞にせん断応力を加え、負荷をかける可能性があるため、細胞生存率の変動を防ぐためには過度な混合も避けなくてはなりません。可能な限りプロトコルに従い、すべての手法、混合手順、および分注速度を正確に記録することにより、細胞操作の再現性を向上させることができます。

Scientist aspirates liquid from a 96 well plate

汚染

微生物によるサンプルの生物汚染や、細胞操作中の異なる細胞株間の相互汚染は、細胞の健康状態に影響を及ぼし、信憑性のない結果を生み出します。汚染が検出されない場合、細胞の生存可能性と挙動に関して誤った結論を導き、研究の整合性と再現性を損なう可能性があります。サンプルの汚染を防ぎ、望ましくない微生物を特定出来る品質管理試験を行うためには、細胞サンプル、培地および試薬の正しい取り扱いには、無菌操作や機器を取り入れます。それには滅菌ピペットやチップ、フィルターチップの使用、およびワークフローの自動化など配慮をしなければなりません。

再現性の高い操作を実現

ワークフローの自動化は、再現性を高め、細胞に作用するせん断力を制御し、手動操作で避けられないばらつきを排除します。これは特に384ウェルプレートを用いた大量のサンプルを処理する場合に重要であり、手動操作では、不一致の発生率が高いため、達成することはほとんど不可能です。自動化されたプロセスに切り替えることにより、このようなばらつきを克服することができ、バイオプロセスと細胞操作を制御し、均一性を高めることが可能になります3

ユーザーによるばらつきを軽減するためには、プレーティングから処理まで、細胞培養におけるすべてのピペッティング操作を自動化することが理想的です。電動ピペットはそれを簡単で手頃に叶える手段です。電動ピペットでは、定義された分注速度や混合操作を含む分注条件を選択、記録、および保存することによって、経験や技術に関わらず、それぞれの動作を毎回同じ速度で実行することができます。さらに、連続分注モードでは、大量の液体を設定された容量で少しずつ吸引・吐出することが可能であり、不一致や操作エラーが生じる可能性のあるソースとプレート間の移動回数を低減出来ます。電動ピペットやピペットチップなどのすべてのプラスチックラボウェアは、チップ形状や寸法、開口部径が異なれば、細胞に及ぼす影響も異なることがあるため、統一されている必要があります。

さらに、ロボットを使用して分注のワークフロー全体を自動化すれば、ユーザーの技術や経験の影響を完全に排除できます。手動から自動化されたプロセスへの移行段階では、スタッフが新しい機器や消耗品に慣れるための学習曲線が存在すると考えられますが、ハンズオフワークフローは最終的にばらつきや汚染の原因となるユーザーを排除し、操作技術の再現性を高めます。

Scientist working in a biosafety cabinet to prevent contamination in cell culture
  1. Baker, M (2016). Reproducibility crisis. Nature, 533(26), 353-66.
  2. Niepel, M., et al. (2019). A multi-center study on the reproducibility of drug-response assays in mammalian cell lines. Cell systems, 9(1), 35-48
  3. Brindley, D., et al. (2011). Bioprocess forces and their impact on cell behavior: implications for bone regeneration therapy. Journal of tissue engineering.