· ユーザー証言
WELLJETスタッカー式ディスペンサーを使用した致死性のアメーバ症に対する創薬の加速
クリストファー・A・ライス博士は、パデュー大学比較病理学講座の寄生虫学助教授であり、ライス研究グループの主宰者です。彼のチームは、アメーバ性角膜炎(AK)、肉芽腫性アメーバ性脳炎(GAE)、バラムチアによるアメーバ性脳炎(BAE)、原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)といった深刻な感染症を引き起こす3種類の自由生活アメーバ(アカントアメーバ、バラムチア・マンドリラリス、およびネグレリア・フォーレリ)に重点を置いた研究を行っています1。これらの疾患は誤診されることが多く、急速に進行し、死亡率は90%を超えており、積極的な臨床介入を行っても、生存者は世界的に見てもほんの一握りしか報告されていません2。
これらは重症感染症であるにもかかわらず、新しい治療薬の研究は歴史的に限られています。2022年にパデュー大学に研究室を設立して以来、クリスはこのギャップを解決するため、高度に標準化された創薬パイプラインを構築し、現在の治療薬よりも安全性・有効性が高い治療薬を特定するため、何十万もの化合物をスクリーニングしてきました1。「自分の研究室を設立する前に、ほぼ10年かけて50万近くの化合物をスクリーニングしていました」とクリスは説明してくれました。「2023年以降、わずか2年間で約50万化合物をスクリーニングしました。この水準のスループットは、自動化なしではどうしても不可能です。」
再現可能な薬剤スクリーニング
大学での創薬研究における大きな課題のひとつは、大規模な化合物ライブラリー、異なる寄生虫種、および複雑な実験手順を扱う場合に、信頼性が高く比較可能な結果を得ることです。クリスは次のように説明してくれました:「私たちは、3種のアメーバすべてに同じアッセイを使用してハイスループットスクリーニングを行っているため、それぞれの種、遺伝子型、および株が、異なる化合物や治療戦略に対してどのように反応するかを直接比較することが可能です。これにより、広域抗アメーバ薬と特定の寄生虫に有効な候補薬の両方を特定することができます。また、薬剤耐性が循環しているか、あるいは出現しているかといったことを評価することもできます。」
これを実現するため研究室では、パデュー創薬研究所で音響ナノドロップ分注を使用して、同一のアッセイプレート(各プレートには約20種類の薬剤候補化合物が一定濃度で含まれている)を大量に調製しています。次に、これらのプレートをWELLJETスタッカー式ディスペンサーにセットします。これを使用すると、一度に最大50枚のプレートアッセイを自動で行うことが可能になり、96ウェルと384ウェル両方のフォーマットで一貫した試薬分注を行うこともできます。スクリーニングアッセイは、アッセイ間のばらつきを抑え、直接比較可能なデータセットを得るため、薬剤のバッチ、濃度、およびプロトコルを実験間で揃え、3複製で実施します。
この水準の標準化は、薬剤感受性パターンを追跡し、アメーバの『存在が人々に認識される』ことを目的とした一元型薬剤活性レポジトリ(RADARプロジェクトと呼ばれる)を研究室が確立するために不可欠でした。このレポジトリには、臨床例と環境の両方から得られた寄生虫株が含まれており、初期の知見では、他のバイオバンクのサンプルよりも耐性の高い表現型を示す株がすでにいくつか存在することが示唆されています。このことは、新興の耐性や将来の治療課題を特定する上で、標準化された大規模スクリーニングが重要であることを浮き彫りにしています。この研究室では、すべてのスクリーニングに同じ自動リキッドハンドリングワークフローを適用することにより、本当の生物学的差異と実験的変動とを区別することができます。「バッチ間の違い、販売会社の純度、および手作業による取り扱いは、すべて結果に影響する可能性があります」とクリスは指摘します。「自動化によって、これらの変数を正規化することができるので、データの取得と解析をスピードアップし、生物学に集中することができます。」
バイオセーフティに関する実験室ワークフローをコンパクトに自動化
病原性生物を扱う場合、実験室の自動化に際して課される制約が増えます。ラボでのアメーバを使用するスクリーニングは、すべてバイオセーフティレベル2(BSL-2)の環境で行われますが、このスペースは限られています。WELLJETの設置面積はコンパクトなため、6フィートのバイオセーフティキャビネット内に設置することが可能で、利用可能な作業スペースのほんの一部しか占めず、研究者が効率的に作業できる十分なスペースが残ります。
「設置面積は、適切な機器を選ぶ際の大きな要素でした」とクリスは説明します。「WELLJETはBSL-2キャビネットに簡単に収まりますし、スタッカーシステムによって多数のプレートを一度に処理できます。この点は、一度に少数のプレートしか扱えないシステムに比べて大きな利点です。プログラムも非常に簡単に行えます。この点は、ラボの新人をトレーニングする際や、標準化されたワークフローを日々実行する際に大きな違いをもたらします。」
WELLJETと並んで、この研究室ではMINI 96分注機を使用して、プレート間移動、薬剤プレートの複製、寄生虫のアッセイプレートへの分配を迅速に実施しています。これらのシステムを組み合わせることで、手作業によるピペッティングを減らし、交差汚染のリスクを最小限に抑え、研究者を反復運動過多損傷から守る、柔軟でスケーラブルなワークフローとなります。
顧みられない病気の研究の迅速な進展を支援
WELLJETやMINI 96のようなコンパクトで費用対効果の高いツールは、従来は創薬産業でしか利用できなかった標準化されたハイスループットワークフローを、大学の研究室が採用するのに役立っています。そうすることで、これらの機器は希少で顧みられない病気に取り組む研究者を支援し、最も進歩が必要とされる分野で進歩を加速させます。「自動化の効率は、これまであまり注目されてこなかった病気の研究を進めるのに役立つ場合があります。私たちの目標は、AK患者の転帰を改善し、これらの脳感染症に罹患した人々に生存のチャンスを与えることです」とクリスは語ってくれました。「安全性と選択性がより高い薬剤を開発し、耐性パターンをより早い段階で理解することができれば、現在はほぼ確実に死に至る病気の転帰を変えることができます。」
参考文献
- Rice CA, et al.Discovery of repurposing drug candidates for the treatment of diseases caused by pathogenic free-living amoebae(病原性自由生活アメーバに起因する疾患の治療のためのdrug repurposingによる薬剤候補の発見).PLOS Neglected Tropical Diseases.2020;14(9):e0008353. doi:10.1371/journal.pntd.0008353
- Haston, JC and Cope, JR. Amebic encephalitis and meningoencephalitis: an update on epidemiology, diagnostic methods, and treatment(アメーバ性脳炎と髄膜脳炎:疫学、診断法、および治療に関する最新情報).Current Opinion in Infectious Diseases.2023; 36(3):186-191.doi:10.1097/QCO.0000000000000923