メンタルヘルス疾患の治療モニタリングの新しいアプローチ

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メンタルヘルス疾患の治療モニタリングの新しいアプローチ

 

iGEM大会は、高校、学部、または大学院で研究する世界中の学生グループを対象とした毎年恒例の合成生物学のイベントです。学際的なチームが協力して新しい検査システムを設計・構築し、グランドジャンボリーで発表して審査を受けます。このコンテストは、現在環境、社会、および人間の健康が直面している問題の解決に役立つ合成生物学の発展を促進することを目的としています。

TU_BSの2023年iGEMチームが指摘した重要な問題は、双極性障害などのメンタルヘルス疾患の治療に一般的に使用される有効性の高い気分安定薬であるリチウムベースの治療薬に関連する毒性リスクです。リチウムは体内濃度が高くなると毒性を示すことがあり、血中リチウム濃度の定期的なモニタリングが極めて重要となります。残念ながら、これらの検査は現在、医療訓練を受けたスタッフが医療環境で実施しなければならず、結果が検査室から返されるまでに時間がかかります。頻繁な通院や血液検査は当然不便ですが、現在のところ他に利用可能なモニタリングの選択肢はありません。

TU_BSの学生は、検査の代替手段がないことから、新しいプロジェクト– Li+onSwitch –を立ち上げることにしました。これについて、昨年のiGEMチームのメンバーであるダニエルは次のように説明しています。「ドイツでは現在、約250万人が双極性障害に罹患しています。1これらの患者に利用できる薬はありますが、リチウム療法などの一部の薬は望ましくない副作用を伴う可能性があります。私たちは、病院に行かなくても毒性の早期発見と予防が可能な、自宅で実施できる信頼性の高い自己検査の必要性が大きいことに気づきました。」

Daniel Schulze
写真提供Technische Universität Braunschweig

研究チームは、最近発見されたLi+リボスイッチを用いて、血液または唾液サンプル中のリチウム濃度を高信頼度で測定できる大腸菌の堅牢なレポーターシステムを開発しました。彼らは2023年6月にINTEGRAから直接PIPETBOY acu 2セロロジカルピペットコントローラー3台を贈呈され、細菌培養に関連するさまざまなリキッドハンドリング作業をスピードアップするためにすぐに使用を開始しました。ダニエルは次のように続けました。「私たちの仕事の大部分は、独自のプラスミドコンストラクトの設計と潜在的なレポーターシステムのテストを含んでいたので、液体培養を広範囲に使っていました。私たちはINTEGRAからPIPETBOYピペットコントローラーを受け取って非常に心を躍らせました。それらはすぐに私たちの研究室で日常的に不可欠なツールとなり、反復ピペット作業のプロトコルを大幅にスピードアップし、研究室の生産性を向上させ、研究の他の側面に使える時間が増えました。また、非常に精密な機器であるため、多くの手作業によるリキッドハンドリング作業の再現性と一貫性を向上させるのに役立ちました。」

3台のピペットコントローラーは、ドラフトチャンバーなど研究室のさまざまなエリアの専用とし、特定の作業ごとにいつでも使用できるようにしました。これはまた、結果の正確性を確保するために不可欠な交差汚染の回避にも役立ちました。PIPETBOY機器のもう一つの大きな利点は、その軽量さと人間工学に基づいた設計で、熱心な学生グループにとって、何時間ものピペット作業がはるかに快適で楽しいものになりました。「最初は、ピペットを使用してLB培養液の原液から3~5 mlのアリコートをたくさん作成しなければならないことが多く、面倒で間違いやすいプロセスでした。PIPETBOYコントローラーを使用することで、原液から目的の容器に液体を1回ずつ苦労して移動させるのではなく、必要な全量の培地を一度に吸引してから別々のチューブに分配することが可能になりました。これにより節約された時間は累積して膨大となり、手動ピペット作業の後に感じることの多かった手と手首の負担も軽減されました」とダニエルは言いました。

「家庭での使用に適したリチウム検査システムを作るためには、微生物を含まないことが必要です。したがって、私たちの最終目標は常に、細菌宿主の外でも機能するまったく細胞を使用しない遺伝子発現システムを開発することでした。最初のプロジェクトは概念実証として成功しており、近い将来にこのアプリケーションへの関心を喚起することを期待しています」とダニエルは締めくくりました。iGEM Grand Jamboreeは11月2日から5日までパリで開催され、TU_BSチームは大学院生部門のBest Diagnostics Projectおよび金メダルを受賞しました。彼らはまた、大学院のトップ10チームにランクされ、大学院生部門のBest New Composite Partにノミネートされました。これらの成果は、この数カ月間のグループの努力の証です。

参考文献

  1. Deutsche Gesellschaft für bipolare Störungen e.V. (DGBS). (2023, April 19). dgbs.de. dgbs.de/bipolare-stoerung/verlauf
Pipette controller PIPETBOY acu 2 in different colors