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PCR精製とは
PCR精製は、下流のアプリケーションで問題となり得る不要な化合物を除去し、目的の増幅産物のみを確実に残すために不可欠です。このPCR精製は通常、磁気ビーズ法またはスピンカラム法のいずれかで行われます。当社は両方の手法に対応するソリューションを提供していますが、磁気ビーズを用いたPCR精製をおすすめしています。というのも、磁気ビーズを用いた手順は簡単に自動化できるため、他の作業にあてられる時間を増やせるのと同時に、ミスを減らして結果の再現性を高めるのに役立つからです。
磁気ビーズ精製の仕組み
磁気ビーズによるPCR精製は、結合、洗浄、溶出の3段階の行程で行われます。液体を扱う行程はベンチトップ装置で自動化できるため、スピンカラムの手順で必要となる煩雑な遠心分離や真空マニホールドを使う手順を省くことができます。そうすることで、作業工程の再現性が改善され、処理能力が高まり、時間の短縮にもつながります。
ステップ1:結合
まず、100 bp未満のDNA断片を効果的に除去するために、正確な磁気ビーズ対サンプル比(通常1.8倍)でビーズをサンプルに添加します。次に、DNA増幅産物とビーズの結合を促すため、撹拌を繰り返し、一定時間放置します。その後、ビーズに結合した増幅産物を回収するために磁気分離をおこない、上清(プライマーやプライマーダイマーなどの小さなDNA断片を含むもの)を吸引廃棄し、核酸を単離します。
ステップ2:洗浄
その他の不要な成分(取り込まれなかったdNTP、酵素、塩類)は、サンプルにエタノールを加えて混合し、磁気分離を繰り返すことによって洗浄します。不要な成分を含むエタノールを吸引廃棄し、空気乾燥させて残留した溶媒を完全に蒸発させることで、下流のアプリケーションに影響を与えないようにします。
ステップ3:溶出
最後に、低塩溶出液またはヌクレアーゼフリーの水を加えて、乾燥状態のビーズを再び液中に分散させ、結合したDNA(増幅産物)を溶液に戻します。その後、磁気分離によって溶出液からビーズを分離することで、下流のアプリケーションで必要な高品質の精製DNAを回収できます。

磁気ビーズPCR精製手順を効率化するには
当社は、実験室での作業を可能な限り簡素化し、磁気ビーズによるPCR精製作業工程の効率を高めるためのソリューションを数多く提供しています。
- PCR精製用のMAGFLO™ PCR磁気ビーズ*- MAGFLO PCR磁気ビーズは増幅産物を高収率で回収できます。自分で試すための無料の1mlサンプルを注文できます。
- MAGモジュール - 当社の磁気モジュールは、従来の磁気スタンドに代わる便利な製品です。マグネットが自動で垂直に移動するため、チューブやプレートを磁気スタンドに移し替えたりする必要がなくなり、サンプルがこぼれる心配がありません。さらに、ビーズはリング状のペレットを形成するのではなく、一ヶ所に集められるため、上清を攪拌することなく、より簡単に吸引することができます。様々なタイプの実験容器に対応するアダプターを多数揃えているため、サンプル容器とマグネットとが完璧に適合し、すべてのビーズを確実に捕捉し、高い収率が保証されます。生産性をさらに高めるため、MAGモジュールを当社のベンチトップ装置(VIAFLO96/384電動プレート分注機とASSIST PLUS分注ロボット)と組み合わせることで、作業工程を半自動化あるいは完全自動化することが可能です。
- ASSIST PLUS分注ロボット - ASSIST PLUSを使えば、当社のマルチチャンネル電動ピペットを自動化して、MAGモジュールも組み込むことができるため、全自動のPCR精製作業工程を実現できます。大型のリキッドハンドリングロボットとは異なり、この手頃なソリューションでは、プログラミングの知識がなくてもセットアップが可能です。便利なテンプレート・スクリプトもご用意しています。
- VIAFLO 96/VIAFLO 384電動プレート分注機- 96または384サンプルの同時分注を可能にする当社のVIAFLO 96/VIAFLO 384電動プレート分注機では、液体の移し替えを半自動化することができます。これをMAGモジュールと組み合わせれば、多検体処理に適した、プレート全体を対象とした磁気ビーズ精製作業に最適です。詳しくは、当社のアプリケーションノート「磁気ビーズを使用したハイスループットPCR精製手順:信頼性の高い結果が出るまでの時間」をご覧ください。

スピンカラム精製の仕組み
スピンカラムを用いたPCR精製は、磁気ビーズを用いた作業工程と同じく、結合、洗浄、溶出の行程で構成されます。スピンカラムには核酸に親和性のある膜が施されており、マイクロ遠心チューブに挿入して使用されます。サンプルをスピンカラムに移して遠心分離にかけ、特定のサイズのDNA増幅産物を単離します。増幅産物は膜に結合する一方、プライマーやプライマーダイマーを含むほとんどの不要な成分は通過します。残存する不要な成分は、スピンカラムに洗浄液を加えて遠心分離することで除去できます。最後に、溶出液を加えて、カラムを再び遠心分離にかけることで、精製された目的のDNA増幅産物を膜から取り出します。
スピンカラムは単体のカラムとして、または96ウェル・シリカ膜プレートとして利用可能であり、遠心分離の代わりに真空マニホールドに接続することができるため、作業工程の処理能力を上げることが可能になります。しかし、スピンカラムを用いた精製は、磁気ビーズ法に比べていくつかの欠点が見られます。たとえば、膜が詰まりやすく、最小溶出量が大きいため、DNA濃度が低くなる、といった問題があります。また、作業工程には、遠心分離機や真空マニホールドを使ったいくつかの手作業の行程が含まれますが、これらは自動化が難しいため、人為的ミスのリスクが高くなります。
スピンカラムPCR精製手順を効率化するには
当社のさまざまなリキッドハンドリングソリューションを用いて、スピンカラムでの作業工程を効率化することができます:
- VOYAGERチップ間隔可変電動ピペット – VOYAGER電動ピペットは、ボタン一つでチップ間隔を自動的に調整することができるため、シングルチャンネルピペットを使用することなく、溶液をリザーバーからスピンカラムやシリカ膜プレートに簡単に移し替えできます。
- VIAFLO 96およびVIAFLO 384 - 96および384チャンネルで分注が可能なため、シリカ膜プレートの96ウェルすべてに溶液を並行して分注でき、作業時間を短縮できます。これらの分注機を用いる利点の詳細については、当社のアプリケーションノート「QIAquick® 96 PCRPurification KitとVIAFLO 96電動プレート分注機によるPCR産物の精製」をご覧ください。
核酸精製アプリケーションの向上に役立つ当社のソリューションの詳細は、こちらでご確認いただけます。
*MAGFLO PCRビーズは現在、オーストリア、デンマーク、ドイツ、スウェーデン、スイス、英国でのみ提供しております。
