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3つの主要なアプリケーションで段階希釈の信頼性をアップ
精密なピペット作業で信頼性の高い結果を
段階希釈は、DNA、RNA、PCR産物、タンパク質、微生物などのサンプルの濃度を推定するために行われます。また、薬理学分野における創薬などでは、試薬、化学物質、または化合物を目的の濃度にするためにも重要です。段階希釈は一見簡単そうに見えますが、手作業によるリキッドハンドリングの際、ピペット作業の速度や角度、混合具合のわずかな違いによる誤差がワークフロー全体を通して蓄積されやすく、最終結果の信頼性に悪影響を及ぼすことがあります。また、手動のピペット作業は遅いので結果が出るまでの時間が長くなり、悪い姿勢、重いピペット、硬いプランジャーボタン、繰り返しの多い工程が長期的に続くと、手、肩、首、手首に反復運動過多損傷(RSI)が生じるおそれもあります。
当社のピペットソリューションは、複数の科学分野においてスループットを向上させ、最終結果の正確さを高めることが実証されています。また、複数のチャンネルで液体移動作業をより速く行い、ピペットを持っている時間や、不自然な座り姿勢または立ち姿勢を維持する時間を短縮することで、RSIを生じる可能性を減らすことができます。さらに、INTEGRAのハンドヘルド電動ピペットは軽量で、チップの取り外しに必要な力が小さく、使いやすいサムホイールデザインが採用されているなど、人間工学に基づいて開発されています。電動ピペットを使用することで、手作業による液体移動の膨大な手間が必要なくなり、手や手首への負担を軽減することができます。ここでは、これらの汎用性の高い製品によって効率的で再現性の高い段階希釈のワークフローが実現できる3つの主要なアプリケーションを紹介します。
実例を交えた段階希釈のわかりやすいステップバイステップガイド、ピペット作業の上手なやり方、リキッドハンドリングの特定のパラメーターに焦点を当てたガイダンスについては、次の記事を参照してください。
精密なqPCRバリデーションと核酸定量のための効率的な標準曲線
標準曲線(検量線とも呼ばれる)は、未知のサンプルの濃度決定に用いられる定量的研究・分析ツールです。定量したい分析対象物質、または関連性の深い化合物から、対象濃度範囲の標準曲線を作成し、様々な既知濃度のサンプルを分析することによってアッセイのバリデーションを行います。その後、未知のサンプルでアッセイを繰り返し、標準曲線を用いて分析対象物質の濃度を算出します。例えば、 核酸の定量は分子生物学の研究室では一般的なワークフローであり、 蛍光光度法によって核酸を定量する場合、標準曲線と未知のサンプルの蛍光測定値を比較して、存在するDNAまたはRNAの量を定量することができます。
蛍光光度法をはじめとするRNA・DNA定量法を使用して核酸の濃度、収量、および純度を測定する方法について詳しい説明をご覧ください。
標準曲線は、新しいプロトコルの設定やワークフローの変更時にqPCRアッセイのバリデーションを行うためにも使用されます。 既知量のテンプレートDNAを含むサンプルを用いてqPCRアッセイを実施し、データを標準曲線と比較してアッセイの反応効率を評価します。
qPCRの仕組み、標準曲線を用いたアッセイのバリデーション方法、およびqPCRデータ解析の様々な方法をご覧ください。.
段階希釈の再現性は結果の信頼性確保に重要であり、シングルチャンネル VIAFLO軽量電動ピペットと、ASSIST PLUS分注ロボット用D-ONEシングルチャンネル分注モジュールを使用すれば、ユーザーは分注速度とミキシングパラメーターをあらかじめ設定することで、オペレーターやバッチに関係なくすべての希釈ステップを同一条件下で実施することができます。さらに、このピペットは混合時にダイナミックな容量調整が可能なため、非常にフレキシブルで、プロセスの最適化を図ることができます。マルチチャンネルVIAFLOピペットと VOYAGERチップ間隔可変電動ピペットは、複数の標準曲線を並行して作成する必要がある場合に使用することができます。また、VOYAGERは 希釈前と希釈後の実験容器フォーマットが異なるような段階希釈も直接行うことができるので、液体移動のステップ数を減らして手作業によるミスが引き起こされる可能性を低減します。また、リキッドハンドリングの工程が少なくなるため、段階希釈をより速く行うことができ、スループットが向上し、結果が得られるまでの時間が短縮できます。
再現性の高い段階希釈による確実なMIC試験
抗微生物薬耐性は、病原体の遺伝子のランダム突然変異によって自然に発生しますが、薬剤(特に医療や農業における抗生物質)の誤用や過剰使用はこのプロセスを著しく加速させます。このように、よくみられる感染症の多くは治療選択肢が急速に減少しており、最初から最も有効な治療薬を処方するために抗微生物薬感受性試験を実施することが重要です。また、このような試験は、医薬品開発において新しい抗微生物化合物の有効性を判断する上でも重要な鍵となります。
病原体の抗微生物薬感受性を測定する方法のひとつに、病原体の増殖を抑制する抗微生物薬の最低濃度、すなわち最小発育阻止濃度(MIC)を求める方法があります。これは、液体希釈法、寒天希釈法、または抗微生物薬勾配法によって行うことができます。MICを測定するために最も一般的に使用される方法の包括的レビューはこちらです。
VIAFLO 96とVIAFLO 384電動プレート分注機 およびMINI 96ポータブル電動ピペットは、チップを部分的に装着することで分注の高さと角度を規定の値に設定することができます。これらの機能により手作業による影響が排除され、MIC試験時のリキッドハンドリングステップの均一性が高まります。また、VIAFLO 96とVIAFLO 384の分注機は、ハイスループットな段階希釈を可能にし、研究室の生産性を向上させます。
ASSIST PLUS分注ロボットのような自動分注機があれば、 より複雑なワークフローでも再現性の高い分注を容易に実現することができます。このプラットフォームは段階希釈工程の効率化によって処理スピードを高め、手の空いたスタッフが他の重要な作業を行えるようになるため、研究室の生産性が高まります。さらに、分注ロボットは液体移動中に有害な生物や抗生物質に触れることを防ぎ、手作業によるピペット作業の繰り返しによるRSIをなくすことで、スタッフの安全を確保します。
当社のアプリノートは、ASSIST PLUS分注ロボットの実績ある自動段階希釈プロトコルについて説明しており、十分な試行を重ねたリキッドハンドリング方法を使用してワークフローを効率化しようとしている研究室の関係者にとって貴重な資料となります。ASSIST PLUSで2倍、5倍、および10倍の段階希釈の分注ステップを自動化することにより、MIC試験のワークフローのスピードと精度を向上させる方法をご覧ください。
菌数測定のための段階希釈を簡単に
微生物学の分野では、サンプルに含まれる細菌の細胞数を推定するために段階希釈が日常的に行われます。高濃度に存在する場合は細菌を個々に数えることは当然不可能なので、10倍段階希釈の異なる段階の希釈液で播種・培養を行うことにより、サンプルの細胞増殖パターンを推定します。
一方、サンプル中の細菌濃度がきわめて低い場合、古典的な菌数測定法では信頼できる生菌数を得ることはできません。このような場合、代わりに最確数(MPN)法を用いて細菌数を測定する必要があります。同じ液体培地を複数の培養チューブに分注し、様々な量のサンプルで植菌します。細菌の増殖は、培養中にチューブが濁ったりガスが発生したりして、色が変化することによってわかります。そして、統計的な確率に基づいてサンプル中の生細胞数を推定します。
DOSE ITラボ用ペリスタルティックポンプは、 液体培地やサンプルを培養チューブに迅速かつ正確に分注することができ、MPN法の分注ステップを大幅にスピードアップさせることができます。また、 オプションのベンチトップスイッチまたはフットスイッチによるハンズフリー操作や、PCソフトウェアによる遠隔操作も可能で、特定のMPNのワークフローに合わせたリキッドハンドリングステージに必要な柔軟性をさらに提供します。DOSE ITのカスタムモードでは、分注量、流量、反復回数などの設定可能なパラメーターに基づいて自分用のリキッドハンドリングプロトコルを簡単に作成することができ、サンプル間の再現性が高い分注を保証します。さらに、ポンプは1から8mmまでの様々なサイズのチューブに対応し、多様なスループットレベルを実現します。これはMPN分析時に幅広い容量のサンプルを正確に分注する上で役立ちます。
低濃度のサンプルを扱う際に 、菌数測定のため迅速かつ精密な希釈を行う上でDOSE ITがどのように役立つかについて、詳しい説明をご覧ください。
ニーズに応じた多彩なソリューション
段階希釈は多くの生命科学分野で広く用いられている技法であり、これを正しく行うことがその後の研究の成功につながります。当社のリキッドハンドリングソリューションは、ピペットプロトコルを標準化し、手動ピペット作業で起こりがちな人為的ミスを最小限に抑え、結果の正確性と再現性を向上させます。さらに、これらの革新的で堅牢な製品は、段階希釈のピペットステージを大幅にスピードアップすることができるので、研究室はより多くのサンプルを処理し、結果を得るまでの時間を短縮することができます。他にも、ワークフローの自動化とハンズフリー操作により、研究室スタッフの危険なサンプルへの曝露や、長期的に行うと研究室管理者にとって重要な考慮事項となるRSIを起こす恐れがある、負担のかかるピペット作業を減らすことができます。当社の柔軟性の高い装置は、多くの異なるアプリケーションに容易に適合させることができ、様々なリキッドハンドリングのワークフローを簡素化して研究室の生産性を向上させます。
参考文献
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214753515000169
https://bitesizebio.com/31470/obligate-qpcr-standard-curve/
https://www.jove.com/v/10507/serial-dilutions-and-plating-microbial-enumeration
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1046/j.1469-0691.2003.00790.x