非水様液体をピペッティングする最適な方法

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非水様液体をピペッティングする最適な方法

以下の一般的な推奨事項は、すべてのピペッティング作業に有効です。

  • ピペッティング操作では、マイクロピペットをできるだけ垂直に保持すること。
  • サンプルのキャリーオーバーリスクを軽減するためには、ピペットチップをサンプルリザーバーに深く浸しすぎないこと。
  • 液体に合わせてピペッティング速度を調整すること。

最適なピペッティングについての詳細は、こちらの概要をご覧ください。

Poster with pipetting tips on how to use a pipette

一般的な非水様液体のピペッティング操作

では、どのようにすればよいのでしょうか。非水様液体を1種類だけピペッティングする場合、この液体でキャリブレーションを行うことで測定結果の精度を上げることができます。ただし、ユーザーの経験と技術(手動ピペッティング時の速度に対する感覚など)は、過小評価されがちですが、そうした液体のピペッティングに大きく影響することがあります。

INTEGRAでは、最も一般的な非水様液体の試験を自社のピペットで行いました。以下では、液体についての課題、液体の取り扱い方法に関する最適な操作方法の推奨事項、電動ピペットの最適な設定について説明します。これらの推奨事項を用いれば、マイクロピペットをスピーディーに設定して、より少ない試験で最良の結果を得ることができます(ただし、特定のワークフローには、さらに最適化が必要となる場合があります)。

VIAFLO Electronic Pipette Family

高い粘性の液体のピペッティング操作

DMSO

ジメチルスルホキシド(DMSO)は、一般的に細胞培養で凍結保護物質として、あるいはPCRの際のDNA鋳型またはDNAプライマーにおいて二次構造の形成を防ぐ目的で使用されます。以下に示す推奨事項により、VIAFLOピペットを使用した粘性の高いDMSOのピペッティング精度を向上させることができます。

 

  • ローリテンションチップを使用する —  粘性の高い液体がチップ壁面へ付着してしまうために、液体の全量を吐出することが難しい場合
  • リバースピペッティングを行う —  粘性の高い液体はチップから完全に排出することが難しいため、液体を必要量より多く吸引し、必要量を吐出してから、残液を破棄します。
  • チップを溶液中に長めに保持する — ピペットチップ先端の口径が通常小さいことと、吸引の力が粘性に比べて弱めなとき、短時間で粘性の高いサンプルを完全にピペッティングしにくい場合があるため、吸引および分注の後に2~3秒待時間を置きます
  • 速度を調節する —  DMSOの濃度が高い場合は、ピペッティング速度を450 µl/秒(VIAFLO電動ピペットでは50~1250 μlで速度6)以下にします。DMSO濃度が低い場合には、ピペッティング速度をそれより高く設定できます。
How to pipette viscous liquids: DMSO in a pipette tip

グリセロール

グリセロールは、一般的に細胞培養で凍結保護物質として、あるいは微生物の流加発酵における炭素源として使用されます。以下に示す推奨事項により、VIAFLOピペットを使用した粘性グリセロールのピペッティング操作を向上させることができます。

 

  • ワイドボアチップを使用する — これらのチップを用いれば、特に80 %グリセロールの場合は、チップによる吸引や吐出が容易になります
  • リバースピペッティングを行う — 液体がチップ壁面に付着してしまうために、通常のピペッティング方法ではチップから完全に排出することが難しい場合
  • チップを溶液中に長めに保持する — ピペットチップ先端の口径が通常小さいことと吸引の力が粘性に比べて弱めなとき、粘性の高いサンプルを短時間に完全にピペッティングしにくい場合があるため、吸引および分注の後に2~3秒時間を置きます
  • 速度を調節する — ピペッティング速度を300 µl/秒(VIAFLO電動ピペットでは50~1250 μlで速度4)以下に設定します。グリセロール濃度が低い場合は、粘度が低いので、もっと高速でピペッティングができます。
Glycerol

Tween 20

Tween 20は、非特異的抗体結合を防ぐためにイムノアッセイで使用される一般的な洗浄剤です。以下に示す推奨事項により、 VIAFLOピペットを使用した粘性および起泡性のTween 20のピペッティング結果を向上させることができます。

 

  • ワイドボアチップを使用する — 液体のチップによる吸引や吐出が容易になります
  • リバースピペッティングを行う — ブローアウト時にサンプル中に気泡を吐出して、サンプルにさらなる気泡が発生するリスクを軽減します
  • 速度を調節する — ピペッティング速度を100 µl/秒(VIAFLO電動ピペットでは50~1250 μlで速度2)以下に設定します
Pipetting Tween 20

揮発性溶液のピペッティング操作

エタノール

エタノールは、微生物の固定化、炭素源、あるいはDNAおよびRNAサンプルの殺菌剤、溶媒または沈殿剤として幅広い用途で使用されています。以下の推奨事項により、VIAFLOピペットを使用する際に、揮発性エタノールのピペッティング精度を向上させることができます。

 

  • チップをエタノールでプリウェットする — ピペットの全容量を2~3回吸引・吐出することでピペットチップ内部の環境はエタノール蒸気で飽和され、対象の液体の蒸発を減少させます。VIAFLOピペットでは、「Pipet/Mix」モードがプレウェットに最適です。これは、カスタムプログラムの最初のピペッティングステップとして設定できます。
  • リバースピペッティングを行う — 蒸発による影響をさらに減らすことが目的です。蒸発によるロスは、吐出量ではなく、吐出後に残された廃棄分に現れるからです
  • 速度を調整する — 吸引する場合は、ピペッティング速度を1100 µl/秒程度(VIAFLO電動ピペット50~1250 μlでは速度10)に設定し、吐出する場合は、343 µl/秒程度(VIAFLO電動ピペット50~1250 μでは速度5)に設定します。この速度によりチップ内部に付着したエタノールが流れ落ち、吐出させることができます。エタノール濃度が低いほど揮発性も低く、より低速でのピペッティングが可能です
How to pipette volatile liquids: Pipette tip with ethanol inside

終わりに

粘性や揮発性の高い液体は、ピペッティングで問題が生じる場合があります。取り扱う液体サンプルについて知識があれば、液体ごとの必要に応じてピペット設定を最適化することにより、結果の精度と再現性を最大限に高めることができます。これらの4つの例は、さまざまな非水様溶液を使用するための最適な設定を考える上で、参考にして頂けるのではないかと思います。同じような特性を持つ他の液体や、容量が異なるピペットに適用したり、それらに合わせて調節したりしてご利用ください。

Liquid handling: Multichannel pipette with sterile filter pipette tips