ゲルの充填時間を大幅に短縮してHIV研究を支える

· ユーザー証言

ゲルの充填時間を大幅に短縮してHIV研究を支える

CNRSのエンジニアであるスカーレット・アブー氏は、ラボ作業について次のように述べています。「特にCD4 T細胞は、HIVリザーバーとして作用し、感染初期に確立されます。これらの潜伏性リザーバーは、抗レトロウイルス療法(ART)を生き延びることができるため、治療を中止したり耐性が生じたりすると、感染細胞が再活性化してHIVを産生し始めます。我々のチームは、こうした状況下でのウイルス生存に寄与するあらゆる要因について調べていますが、これは新しい治療の進歩に非常に重要です。」

HIVの縦断的研究を支える

本ラボは1990年代以降、HIV陽性患者グループを対象に研究しており、彼らの治療と疾患進行をモニタリングしています。VOYAGERチップ間隔可変ピペットは、解析に必要な複数患者サンプルの大量なスクリーニングを支えてくれるため、本研究に不可欠なものとなっています。スカーレット氏は次のように続けます。「私たちが今注目しているのは、耐性突然変異の研究を通して、HIVリザーバーの確立と動態を調べることです。我々は、患者の血液サンプルを受け取り、宿主からCD4 T細胞とゲノムDNAを抽出します。プロウイルス(宿主細胞DNAに組み込まれているウイルスゲノム)のPCRを行い、ゲル上でサンプルを泳動させてPCR産物を解析し、断片サイズと断片が短縮したものか完全なもの(約10kb長)かを確認します。ゲル電気泳動後に、PCR産物を精製し、塩基配列を決定します。」

Gaël Petitjean, Research Engineer; Scarlette Abbou, Engineer; and Suzie Houssier, Post-Doctoral Researcher at the Centre National de la Recherche Scientifique in Montpellier.
Photo Courtesy of CNRS - Gaël Petitjean, Research Engineer; Scarlette Abbou, Engineer; and Suzie Houssier, Post-Doctoral Researcher at the Centre National de la Recherche Scientifique in Montpellier.

大量のサンプルを正確に処理する

「本研究のグループは十数人の患者で構成され、患者ごとに複数サンプルをスクリーニングするのは大変な作業です。たいてい、1つの血液サンプルから約100万個の細胞を選別します。確実に単一プロウイルスを増幅させるために、限界希釈(もしくはデジタル)PCRを実施します。つまり、患者ごとにPCRプレートを一度に最大20枚用意します。サンプルをゲルに充填するには、96ウェルプレートからゲルへのピペット分注が必要になります。ゲル中のウェルはプレートのウェルより近接しているため、チップ間隔固定式マルチチャンネルピペットではサンプルを一度に移動することができません。そのため、最初はすべてのサンプルを手動で1つずつ処理しなければなりませんでした。特に、ゲルが破れないよう注意することが重要であるため、非常に時間がかかりました。」

「大量のサンプル処理に時間がかかるのが大きな問題でした。チップ間隔が自動調整できる電動ピペットを提供している会社を探して、数社に連絡を取り、INTEGRAに巡り合うことができました。会社の営業の方が、何種類かピペットのデモ機を持って来てくれました。私は、すぐにVOYAGERが気に入りました。非常に使いやすく、さまざまなプログラムを使用して制御することができます。数年前に、8チャンネルVOYAGERを2台購入しました。ワークフローが向上し、即座に満足しました。VOYAGERを使用することで、96ウェルプレートからゲルへのサンプル移動時間を約40分から5分以内に短縮できるため、複数の患者1人1人について複数プレートを処理する場合に最適です。また、ウェルごとに分注をする必要がないため、正確性が大幅に向上したことにも気づきました。ですから、どのウェルを使っていたか見失うことがなく、ミスを犯す恐れがありません。また、2種類のピペットサイズ(50 µLと125 µL)があるため、さまざまな実験に柔軟に対応することができます。」

VOYAGER Tip Spacing Pipette
VOYAGER Electronic Adjustable Tip Spacing Pipette

さまざまなワークフローに柔軟に対応できる

「VOYAGERは、ラボに大きな変化をもたらしました。今では他の同僚も作業に役立つことを実感し、自分の実験に使用するようになりました。たとえば、同僚の1人は384ウェルプレートを使用してqPCRを行っていますが、そのプレートの小さなウェルとフォーマットの異なる他のラボ容器間の分注に苦労していました。今では、交代で使用しなければなりません!ですが、本当にすごいです。皆、時間を節約することができ、他の実験をする余裕が生まれました。今では、サンプル処理が加速したので、結果を分析したり、次のゲルやPCRの準備を始めたりすることに時間を割けるようになりました。」

さらに多くの機能と優れた人間工学

「INTEGRAグリップチップへのピペットの装着方法が本当に気に入っています。驚くほど簡単で、押すだけでチップがしっかりと装着できます。吸引や吐出にも何の問題もありません。気泡が入らないよう、吸引速度を調整することもできます。このように複数のチップを安全に取り付けることができ、実験中に漏れたり落下することがないと確信できるのは素晴らしいです。つまり、サンプルを台無しにしたり、他のウェルを汚染したりすることはありません。全8個のチップを素早く取り付け、チップ間隔を設定し、実験に没頭することができます!また、チップが384本入りのラックになっているところも気に入っています。ひとラックにチップがたくさん入っているため、ラボのスペースを節約できます。また、プラスチックを減らし環境に配慮することができます。INTEGRAのマルチチャンネル試薬リザーバーも、スペースを節約するために入れ子状に50個重ねた状態で包装されているところがよいです。そして、それぞれのリザーバーを再利用可能なベースに簡単に装着することができます。」

「VOYAGERは私の研究を真に可能にし、実験から結果を得るまでの時間を大幅に短縮してくれました。電動マルチチャンネルピペットは、こうした大量のサンプルの分注を容易にします。VOYAGERは特に使いやすく、形状が気に入っています。さらに、終了したことを気づかせてくれる、プログラム最後に鳴るピペット音は、気分よく最後の仕上げをさせてくれます。まるで、お疲れさま!と言ってくれているようです。本当に素晴らしいです。」